ペンギン・ランダムハウス社で用紙・生産計画を担当するマイケル・デファツィオ副社長が、同社におけるデジタル印刷の活用について語ったインタビューがBookBusiness (03/25)に掲載されている。世界最大の出版社は、オフセットとデジタルの選択が流動的/可逆的にできる体制の構築すを進めているが、これは出版社と印刷会社の協調によるインフラが必要だ。
印刷会社との連携のためのインフラを重視
3月11-13日、米国コロラド州のリゾートで、出版におけるデジタル印刷の現状と課題をテーマとした Publishing Executive Symposiumが、リコーの主催で開催された。最近では出版・印刷関係者を対象としたセミナーが目立っており、HPのほか、キヤノンやリコーがスポンサーになることが多い。ペンギン・ランダムハウス社(PRH)のデファツィオ副社長のインタビューはその際のものだが、用紙調達から印刷にまで深くコミットしている米国の出版社が目ざしている方向を明確に語っていて興味深い。以下は一問一答。
PRHではDP技術をどのように活用しているか
現在は主に1色刷の既刊本の増刷に使っているが、新刊本や初刷でも少部数のタイトルについては使っている。しかし、全体の印刷需要から見るとパーセンテージは低い。
新刊本に使うのはデビュー作家が多いのか
新人の場合もあれば、既刊本の構成を組み替えて新刊として発行する場合もある。
PRHはDPの可能性をどう見ているか
とくに1色刷でDPがより大きな役割を果たすことを期待している。既刊本の在庫の適正化、倉庫の空間管理の改善など、在庫業務に関することだ。
将来的にPRHは在庫レス出版を目ざすか
5年以内の目標とはいえないが、可能性としてはある。ただ、そのためには社内的にもやらなければならないことは多い。技術的にも少し足りないが、それだけでなく、インフラを構築する必要があると考えている。おそらくサテライトとハブを持つ形になるだろう。高いコスト効果を求めるには、プリンタだけでなく、ITインフラが重要になる。最適配置されたプリンタのネットワークなど、在庫レスを実現するために基盤整備が必要だ。
5年後には「オフ/デジ切替」が日常に
DPをフル活用する上での課題はどんなことか
それには2つの方法がある。一つはオフセット印刷の代替だが、それには現在のDPプログラムを拡張し、最適なタイトルを順次DPプラットフォームに移行させるだけでよい。しかし、それにはわれわれも印刷会社も、状況に応じて機敏にオフセットとDPの切替を行える体制をとれなければならない。印刷需要が増える場合にはオフセットに戻る必要があるからだ。もう一つは、ハブとサテライトの組合せ。これは印刷と出版の両側で体制が必要になる。
印刷会社との間でオフ/デジの判断について連携しているか
行っているが、われわれが期待するほどオープンではない。オフ/デジの間を行き来するには、まだ手探りでやっている状態だが、徐々に慣れてきた。経験を重ねることでスムーズになる。
5年後のPRHでDPの役割はどのようなものになっているか
あまり話題にならないことを期待している。というのは、それは本来、出版社としての仕事の一部として普及していくべきものだからだ。DPは新奇なものではなく、日常業務になっていくだろう。◆ (鎌田、03/31/2016)