電子図書館、巣籠需要で利用好調
電子図書館、巣ごもり需要で利用好調 紙にはない楽しみ方も魅力
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網走市立図書館の電子図書館は、運用開始から3カ月で既に900人以上が登録している=同市で2021年3月16日午後0時10分、本多竹志撮影
電子書籍を貸し出す北海道内の自治体の「電子図書館」の利用が好調だ。昨年12月に運用を始めた網走市では、3カ月で市立図書館の貸出数の約1割を電子図書が占めるまで定着し、昨年度より貸出数が倍増した自治体もある。新型コロナウイルス感染拡大に伴う巣ごもり需要が、図書館利用の底辺拡大に役立っている。 ◇網走では貸し出しの1割「電子化」 「24時間、365日、どこでも自由に読書を」――。網走市立図書館はこんなうたい文句で、電子図書館の利用をPRしている。「お母さんには子どもへの読み聞かせ用の絵本、高齢者には往年の名作がそろった『青空文庫』が人気のようです」と担当者は話す。 昨年12月15日に蔵書約2000冊からスタートし、3カ月で約3000冊まで増やした。3月6日現在の登録者数は905人、延べ貸出数は2340冊。通常の貸し出しが月1万冊余りなので、1割弱が電子図書の利用だ。 12月は道内をコロナの第3波が襲い、外出自粛ムードが広がった時期。これが電子図書館への注目を高めたとみられ、特に外出機会が少ない子育て中の母親や日中の来館が難しいサラリーマンらの利用が目立つという。 一般社団法人「電子出版制作・流通協議会」によると、電子図書館は今年1月現在で道内4市1町を含む全国143自治体が導入。さらに今月から登別市で始まり、4月には帯広市が道内最大規模の蔵書数で参入する。 網走以外の図書館も利用は伸びており、北見市は2019年度末で1055人だった登録者が、今年度は2月末までで1906人にほぼ倍増。今年度の貸出数は既に前年度の2・3倍に上る。札幌市も図書館が休館していた昨年3~5月の電子書籍の貸し出しが前年同期の200%超で、その後も前年同月比3~5割増を維持している。 苫小牧市立中央図書館では、昨年6月に来館しなくてもパスワード設定ができるなど電子書籍の利用手続きを簡略化したところ、前年は26冊だったその月の貸出数が8倍近い207冊に急増した。 電子図書は自治体にとっても、収蔵スペースが不要で、版権が切れた無料の青空文庫を使えば収集費用も抑えられるなどのメリットがある。天塩町は米国の電子図書館サービスを導入して英語書籍を充実させたり、札幌市は「おうちで旅気分」などの特集コーナーを設けたりと、独自色も競っている。 道内の電子図書館の先駆けとなった札幌市中央図書館の浅野隆夫・利用サービス課長は「コンピューター関係や料理など貸出数が伸びたジャンルは、まさに巣ごもり需要を反映している。コロナをきっかけに、移動中にも利用できる電子書籍の魅力に気づいた人が多いのでは」と分析。北見市立図書館の担当者は「電子書籍は『3密』回避だけでなく、音声機能、動画絵本など、紙の本にはない楽しみ方もある。ぜひ体験して」と話している。【本多竹志、今井美津子】 ◇道内自治体の電子図書館 自治体 運用開始 蔵書数 札幌市 2014年10月 約8500冊 苫小牧市 〃 約9500冊 北見市 15年12月 約1万冊 天塩町 17年4月 約1万冊 網走市 20年12月 約3000冊 登別市 21年3月 約1300冊 帯広市 21年4月 約2万6500冊