宇治市「電子図書館」開始2か月「読書のきっかけ」期待
電子書籍を貸し出す「電子図書館」のサービスが宇治市の図書館で始まって約2か月。府内で初の試みとあって多くの自治体が注目している。宇治市では貸し出し実績や蔵書数も紙媒体にはまだまだ遠く及ばない状態だが、全国では新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に普及しつつある。「人々が本を手に取るきっかけにもなれば」と業界では今後に期待する声も上がる。(坂木二郎)
もどかしい心情
「臨時休館の期間を延長し、予約図書の貸し出しのみを行うこととしました」
緊急事態宣言を受け、宇治市中央図書館の入り口にはそう書かれた案内板が立っている。新型コロナによる臨時休館は3回目で、館内に職員が居るのに利用者は蔵書を閲覧できない光景が繰り返されてきた。同図書館主幹の藤井健さん(48)は「本来なら図書館を開けたうえで、読み聞かせや本の紹介イベントなどで読書人口を広げていきたいのですが」ともどかしい心情を明かす。
図書館が使えない状態を解消しようと、宇治市が導入したのが電子図書館だ。自宅に居ながら、インターネット経由でスマートフォンやパソコンに書籍のデータを送ってもらう仕組みで、市は1200万円を投じてシステムを構築し、5000冊の電子書籍を購入した。利用者から歓迎する声もあり、市は「新型コロナの早期収束が見込めない中、来館利用を前提とした運営を見直す」として、今年度も400冊を追加するという。
角田光代や川村元気、藤沢周平らの小説からレシピ本、絵本など幅広くそろえる。小学1年を先頭に3人の子どもを抱えて6月末に仕事に復帰予定の公務員竹内典子さん(35)(宇治市)は「どんなに忙しくても、絵本は読んでやりたい。電子書籍なら図書館を往復する時間を節約できる」と期待を寄せる。
「紙媒体の補完」
電子図書館が今後どの程度浸透するのかは未知数で、まだ紙媒体の補完的な側面が強い。宇治市でのこれまでの利用登録者数は約750人で延べ約2350冊の貸し出しがあった。一方、紙媒体の貸し出しは土日の中央図書館だけで普段は1日1500~2000冊ある。蔵書数も市内の3図書館で計32万冊あり、新規購入は毎年9000冊前後に上る。
6歳の孫のため絵本を予約して中央図書館を訪れた女性(70)は「紙の方が読んだ感じがする。今さら電子書籍には興味はない」と素っ気ない。
府内では、京都市、舞鶴市のいずれも予算との兼ね合いなどの理由で具体的な導入計画はない。福知山市は「いずれ必要になってくる」とみて費用対効果などの検討を進めているという。


府外で導入進む
コロナ禍により、府外では電子図書館の導入が進みつつある。一般社団法人「電子出版制作・流通協議会(電流協)」による4月1日現在の全国統計では、2019年に新設した自治体は5か所。20年は53か所、今年は4月1日までの3か月間だけで62か所に上る。多くの自治体が、コロナ対策を支援する国の地方創生臨時交付金を利用しているとみられる。
ただ、それでも電子書籍の貸し出しができる自治体は全体の11%に過ぎない。米国では、15年の調査時点ですでに94%の公共図書館が電子書籍サービスを提供し、大きな隔たりがある。
電流協の担当者は「目の不自由な人が音声読み上げ機能を利用できるなど、電子図書館には様々な利点がある。自治体は導入するだけでなく、電子図書館を理解したスタッフを充実させ、どんなサービスを提供して市民にPRすればいいのか考えていくことも重要だ」と話している。