POD出版モデル

https://www.ebook2forum.com/members/2019/10/ebook-and-print-on-demand-makes-great-for-self-publishers/

E-Book+自主出版+PoDの連携の意味

Web時代のサービスとツールは、単独では機能しにくいものが多い。デジタル出版はその典型と言ってもいい。KoboのPoDには、印刷本という選択肢のほかに、書店や図書館を含む伝統的なコミュニティとの融和という(E-Bookでは機能しにくかった)戦略の再起動という意味がある。自主出版の本格的事業化という以上の意味がある。[全文=会員]11/7まで特別公開

紙とデジタルの表裏一体性!

E-Bookの自主出版はSmashwordsのマーク・コーカーというパイオニアが初めて成功させた。KDPはSelect やKindle Unlimitedという強力なビジネスモデルによって力で捻じ伏せた形だが、基本的には商品の評価システムやマーケティング支援環境で著者の支持を得た。前者がインディーズのコミュニティで軌道に載せたとすれば、アマゾンは総合的なシステムとして、新しい出版市場をきめ細かく整備していったのだ。その中で、これまで筆者は自主出版の「著者・本」を、商業出版本と比較される商品として定着させる上で、(1) ストアのデザイン、(2) 読者レビューのオペレーション、(3) ソーシャルリーディング (Good Reads)に注目してきた。しかし、PoDということも大きな要因として欠かすことができないと思われる。

アマゾンはCreatespaceを続けることでKindleとAmazonストアを10年以上続けることで、自主出版著者の印刷版需要がいかに強いかを確認し、それらの表裏一体性をデジタルと紙で同時に確認してきた。人々がデジタル「コンテンツの実体性」(あるいは紙との等価性)を実感するには印刷版が不可欠に近いもので、むしろ「自主出版」ほど印刷版が(証拠「原本」として)重要となるということをアマゾンは最初から理解しており、著者と読者にこのオプション・フォーマットを提供する手段と価格を検討してきたということだ。KDP Printはその結論だ。

Koboライティング・ライフの再挑戦

アマゾンに遅れはしたが、楽天傘下の Koboも、2012年から Writing Lifeという自主出版のプラットフォーム・サービスを開始し、世界的に提供している。理由は「著者=読者」が(とくに北米では)遠い存在ではなく、そしてE-Bookビジネスにおいてはコスト的な負担(オーバーヘッド)が大きくないためだろう。しかし、上述したように自主出版ではPoDがなければ市場の可能性を開拓できない。PoDにはグラウンド・サービス、オペレーションの仕様が必須で、価格決定にはパートナーの存在が前提となる。

FNACは、全世界1万以上の仏語書籍を扱う図書館への納本ネットワークを有しており、Writing Lifeのユーザーが、49ユーロを払えば図書館への販促と販売を代行する。売上実績によって (A) 1~799部、(B) 80~1200部、(C) 1200部以上のカテゴリに応じて販促協力と売上シェアが設定されているようだ。図書館はタイトルによっては有効なチャネルで、とくにインディーズ作家にとっては書店への入り口にもなる。フランスでの試みが成功すれば、書店や図書館の環境が似ている大陸欧州で見通しがつき、苦手な米国での再挑戦も可能になると思われる。

「巨大市場」への期待

米国で「新刊発行部数」100万点を超える「印刷本自主出版」市場は、成長率とともに無視できない市場となってきた。規模は不明だが、数億ドルの規模になっていてもおかしくない。ちなみに商業出版の年間発行点数は、2013年で30万点余りだが、中国に抜かれたままであまり変動がないのは、チャネルの物理的限界が規定しているためだ。他方で、自主出版やアマゾン出版は、在来市場の外に生まれたチャネルの成長を示している。10万単位の著者が1000万単位の読者/消費者を相手に出版していることを意味する。それが商業出版の規模に達するとはまだ言えないが、非商業的出版の登場が出版というものの構造を大きく変えていることは間違いない。

在来出版から見ると、雲霞のごとき粗製乱造の「本もどき」が市場を荒らしまくっていると思えるだろう。しかもE-Bookを「二級」扱いしても2割のシェアを奪われた上に、さらに「紙で勝負」を仕掛けてくる「非商業的」自主出版本を相手とする力は残っているだろうか。有効な対応は基本的に一つしかない。まずインディーズを取り込んで「ともに稼ぐ」こと、次に著者・読者ととも「ともに啓発し、ともに楽しむ」コミュニティを広げていくことだ。(鎌田、10/31/2019)

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