縦読みマンガ

スマホ最適化 「縦読み漫画」急拡大 グリー参入 大手出版社も攻勢

2022年7月27日

スマートフォンで読むために最適化された縦読み漫画の流行で、漫画の制作現場が大きく変わろうとしている。ソーシャルゲームなどを手掛けるグリーが新規参入を発表。縦読みを前提にした新たな表現方法に取り組む重鎮漫画家も現れた。新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要で急拡大する世界市場も視野に、日本で築き上げられてきた漫画文化は転換点を迎えようとしている。

グリーは7月、漫画の制作や配信を手がける子会社「DADAN(ダダン)」(東京都港区)を設立し、漫画事業に新規参入すると発表した。今冬にはスマホアプリによる漫画配信プラットフォームサービスを開始する。

スマホでの表示に最適化した縦読み漫画に注力。出版社との事業提携なども模索する。漫画アプリはすでに数多くあり後発となるが、ゲームやアニメ事業などで培ったプラットフォームの運営ノウハウやコンテンツ制作力で成長市場に挑む。ダダンの小竹讃久(しの・さんく)社長は「ビジネスとしても制作方法としても変化が生まれている中で、必ずしも既存プレーヤーが強いわけではない」と自信を見せる。

縦読み漫画は1コマ1コマを縦方向に配置し、せりふや絵柄の書き込みを簡素化。縦長のスマホ画面で上下にスクロールさせて読みやすくしている。原作者や作画担当を分業して生産効率を高めるなど、漫画家1人の力量に頼っていた従来の手法とは大きく異なる。小竹社長は「市場が伸びるといっても、長期的な成功には時間がかかり、企業として胆力が必要。参入できる会社は限られるだろう」と話す。

民間調査会社のMMD研究所が25日に発表した調査では、漫画アプリの利用経験者は35.6%。そのうち41.7%が縦読み漫画を読んだことがあると回答した。無料通信アプリ「LINE(ライン)」グループの「LINEマンガ」が利用率41.9%で首位を占めた。

LINEマンガは平成25年にサービスを開始。現在の月間利用者数は国内外で8200万人に上る。112万作品を配信し、月間流通額は100億円を超えるという。LINEグループを傘下に収める韓国ネイバーはスマホ向け縦読み漫画を意味する造語「Webtoon(ウェブトゥーン)」を各国で商標登録するなど先行。集英社と小学館が専門部署を設けたほか、KADOKAWAは令和4年度に約160作品を投入するとしており、大手出版社もウェブトゥーンで攻勢をかける。

昭和40年代に週刊少年ジャンプの人気を牽引(けんいん)した「男一匹ガキ大将」や破天荒な会社員が主人公の「サラリーマン金太郎」などのヒット作を持つ本宮ひろ志氏は縦読みを前提にしたオムニバス形式の「新グッドジョブ」を週刊ヤングジャンプで連載している。1ページを左右に2分割して上下に読むようにコマを配置するなど、大ベテラン漫画家も新しい表現方法を取り入れようと試行錯誤を続けている。

全国出版協会・出版科学研究所によると、令和3年の国内漫画の販売額は6759億円で、紙ベースの販売減少を電子版が補う形で拡大している。電子版は前年比2割以上増え、初めて4千億円を超えた。同協会は「縦読み漫画が新たなユーザーを掘り起こしている」と分析している。5年後には世界の縦読み漫画市場が2兆円を超えるとの試算もある。

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