カカオ絶体絶命(2023年11月)
韓国「カカオ」帝国が2度目の「創立以来最大の危機」に…!最高投資責任者など経営陣3人が検察送致の絶体絶命
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創立以来最大の危機
韓国のIT大手「カカオ」が創立以来最大の危機に追い込まれた。 SMエンターテインメント買収過程での相場操作疑惑で経営陣3人が検察に送致されたことに続き、タクシー呼び出し中継サービスを運営する「カカオモビリティ」が粉飾会計やタクシー運転手に対する不公正取引疑惑で公正取引委員会と金融監督院の調査を受けている。相次ぐ危機にカカオは非常経営体制に突入し、対策に苦心している。 【写真】元韓国代表女性オリンピアンを巡る「希代の結婚詐欺事件」 カカオは、サムスングループのIT物流を担当するサムスンSDS出身の金範洙(キム・ボムス)氏によって2010年に創業されたモバイルサービス基盤のIT企業だ。創業と共にローンチした無料メッセンジャーアプリ「カカオトーク」が、約5000万人の韓国人口のうち4300万人以上が加入する「国民メッセンジャー」として大成功をおさめて以来、破竹の勢いで事業分野を広げてきた。 ネットショッピング(カカオトーク・ショッピング)、ネットバンク(カカオバンク)、タクシー呼び出しサービス(カカオモビリティ)、エンターテインメント(カカオエンターテインメント)、音源流通(メロン)、ウェブトゥーン(ピッコマ、カカオウェブトゥーン)サービスに至るまで、タコ足拡張に乗り出し、2023年第2四半期基準で167の系列会社を保有している。 2021年には韓国有価証券市場でサムスン電子、SKハイニックスに続いて時価総額3位を記録し、IT大企業の仲間入りを果たした。今や韓国の若者たちが就職したい会社ランキング上位の常連にもなっている。 だが、路地商圏(町内の商店街などの零細業者が営む商圏)まで侵犯するタコ足式事業拡張や経営陣のモラルハザードに対する国民的な指弾が降り注ぐ中で、主力事業の「カカオエンターテインメント」と「カカオモビリティ」が検察や金融監督院の捜査対象に上がるなど、司法リスクまで加わったことで、株価は急落し、経営陣は拘束の危機にまで追い込まれている。 カカオの代表的な事業分野として仲介プラットフォームビジネスがある。カカオトークの圧倒的な加入者数を土台に、タクシー呼び出しから美容室予約、花配達、おやつ配達、訪問修理予約などいくつものプラットフォームを運営している。 ところが、巨大企業のカカオが主に零細自営業者を対象にするプラットフォームビジネスを展開しながら、独占的な立場を利用して過度な手数料を徴収するなどの「横暴」を行っているという批判が韓国社会では絶えなく提起されていた。尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領が「不道徳だ」と批判したカカオモビリティが代表的なケースだ。
いったい何が起こったのか
タクシー呼び出し仲介プラットフォームを運営するカカオモビリティは、2015年のサービス開始時には、乗客とタクシーの両方から仲介手数料を取らず、無料呼び出しを提供した。しかし、競合業者を市場から追い出し、市場を完全に蚕食すると、経営が一変する。他社より高い仲介手数料を設定し、乗客からの呼び出しは自社加盟のタクシーに集中させた。 さらに、ライバル会社に加盟したタクシーに対しては最初から呼び出しを遮断したり、加盟タクシーの運転手たちには街で客を乗せる時もカカオに手数料を支払わせたりするなどの手数料詐取をしたりしてきた。タクシー呼び出し仲介事業市場の95%、加盟タクシー事業市場の85%という独占的地位を利用して、一種の不公正取引を続けてきたのだ。 これに対し、公正取引委員会の調査が始まり、今年2月には乗客の呼び出しを自社加盟タクシーに集中させたことについて課徴金257億ウォンを言い渡された。そのほかの不公正行為に対する調査を続いている。 そこへさらに粉飾会計疑惑が浮上した。カカオモビリティが年内IPOを控え、加盟会社との二重契約などの手法を使い、昨年だけで3000億ウォンの売上を水増ししたという情況が捕捉され、韓国の金融監督院から監理が進行中だ。 今年3月、“K-POP御三家”の一角SMエンターテインメントを買収して業界を驚かせたカカオエンターテインメントも相場操作疑惑で金融監督院によって検察に送致された。SMエンターテインメントをめぐる「HYBE」vs.「カカオ」-「カカオエンターテインメント」間の買収戦で株価を操作し、HYBEの公開買収を妨害した疑いだ。 今年2月、SMエンタテインメントは、李秀満(イ・スマン)総括プロデューサーの海外滞在中、経営陣がカカオ-カカオエンターテインメントとの買収合併を宣言、これに怒った筆頭株主の李秀満氏がHYBEに自身の株式を譲渡したことでSMエンターテインメントを巡るカカオとHYBEとの「銭の戦争」が始まった。 HYBEは追加で総株式の25%を1株当り12万ウォンで公開買収すると宣言したが、公開買収が発表されると大量買収が出てきて、10万ウォンを下回っていたSMの株価が12万7600ウォンまで急騰、HYBEは追加買収に失敗した。その後、カカオ-カカオエンターテインメントが1株当り15万ウォンで公開買収、SMエンターメイントの経営権を手に入れることになった。 ところが、HYBEが公開買収を宣言した直後、カカオ側が2400億ウォンを投入して100万株を買い入れた事実が明らかになった。金融監督院はカカオ側がHYBEの買収を妨害する目的で相場を調整したと判断したのだ。また、この過程でSM株式を5%以上保有したことについて、期間内に報告しなかったことも不法行為と見られている。 結局、金監院はカカオとカカオエンターテインメント、そしてペ・ジェヒョン=カカオ投資総括代表などの経営陣3人を検察に送致した。このうち、ペ代表には拘束令状が発行され、経営の一線から退いた未来イニシティブセンターの金範洙センター長までが検察から高強度調査を受けている。 もしも、ペ代表や金センター長が有罪判決を受けた場合、カカオは核心事業体である「カカオバンク」の所有権を失うことになる。 韓国のインターネット銀行特例法には、「インターネット銀行の持分10%を超過保有するためには、この5年間租税犯処罰法、特定経済犯罪加重処罰法、公正取引法などの違反で罰金刑以上の処罰を受けた事実があってはならない」と明示されている。カカオバンクの大株主であるカカオの経営陣が有罪判決を受けることになれば、保有株式を処分しなければならないのだ。
経営刷新を約束したばかりなのに
実は、カカオの危機は今回が初めてではない。 2021年には主要系列会社の「カカオペイ」の上場から1ヵ月後、代表など8人のカカオペイ経営陣が800億ウォン相当のストックオプションを団体で売却し、カカオペイとカカオの株価が急落した事件があった。 国民的な非難が殺到すると、カカオペイは「初心に戻り、顧客と株主の信頼を回復するために最善の努力を傾ける」と謝罪し、経営陣の交代などの刷新案に乗り出したが、国民世論は振り返らなかった。 昨年の10月にはカカオのデータセンターがあった「SKC&Cデータセンター」に火災が発生し、カカオトークをはじめとするすべてのサービスが長時間中断される事態が起きた。 サービスの長時間中断は、160社余りの系列社を抱える韓国屈指のIT大手が独自のデータセンターを持っていなかったために招いた事態だ。外形拡張だけに没頭し、データセンターの構築やサービス品質の向上を疎かにしたカカオに対して国民的な非難世論が強まると、カカオは一歩遅れて独自のデータセンター構築に乗り出した。 当時、韓国メディアには「創立以来最大の危機」という言葉があふれ、カカオは「今回の事故は、私たちが追求しなければならない最も基本的な価値を忘れていたのではないかと反省する契機になりました。初心に戻って利用者の方々が一番望むことは何なのかを考えます」と、経営刷新を約束した。 だが、その約束は空念仏になり、カカオは司法リスクによって、再び「創立以来最大の危機」に直面してしまったのだ。